指先で紡ぐ月影歌
『で?そんな顔してる理由はなんだよ』
片目を開けて小さく首を傾げながら問い掛けてくる姿は鬼の副長というよりも、昔朝まで飲み明かした少し意地悪そうなトシさんで。
そう見えたせいだろうか。
俺の口からは誰にも言うことの出来なかった本音がポロリと零れていく。
「…俺たちのやったことに、意味ってあったのかなって…」
そう思い始めたのは、ここ最近の話じゃない。
負け戦が続いて、江戸に引き上げて。
江戸城が無血開城したと聞いた頃にはもう、そんな思いが心の奥に燻っていた。
それでも俺には戦うしかなくて。
それをやめるわけにはいかなくて。
そうすることで浮かび上がった疑問に目を瞑ったんだ。