指先で紡ぐ月影歌
だって近藤さんは俺らの夢の象徴だった。
数えきれないほどのいざこざがあったけど。
やってられないと暴言を吐き捨てたこともあったけれど。
それでもあの男だったから。
近藤さんだったから、俺は着いていったんだ。
それなのに、一人で死なせちまった。
腹を切ることすらさせてやれなかった。
そしてその罪を土方さん一人に背負わせた。
思い出すたびに喉が焼けるように痛くなる。
知らず知らずのうちに握りしめていた左手は血の気が失せて白くなっているが、気にしていられない。
そんな俺に土方さんは一つ息を吐いてから
『…どっちだって結論は同じだったさ。そういう人だ』
と呆れたように笑いを溢した。