指先で紡ぐ月影歌




『お前は一人じゃない』




コトコトと空になった盃に注がれる酒。

その水面に映る土方さんの瞳に思わず顔を上げた。


目の前には、最後まで変わることのなかったあの瞳。

黒い黒い闇夜のように見えて、隠すように優しく月を浮かべた瞳。


これが強さなんだと知ったのはいつだっただろうか。


あぁ、そういえば。この強い瞳に憧れて、この人の後ろをついて回る小さなガキがいたっけ。


きっと俺が見届けることの出来なかった最後の瞬間まで、この人は同じ目をしていたんだろう。

時代がいくつ変わっても、この人はいつまでも"副長"を貫いたんだろう。


そして俺のようにたくさんの男たちがこの瞳に憧れ、着いていったんだろう。




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