指先で紡ぐ月影歌
『…もし、それでも怖ぇっつーんなら…生きろ新八』
くいっと盃を傾けて、土方さんが少しばかり表情を緩める。
そして男でも見惚れるような綺麗な弧を描いた唇。
突然呼ばれた下の名前にどきっとした。
一体どれくらいぶりだろう。
彼にその名を呼ばれるのは。
芹沢さんのとき以来だろうか。
それだけでもぐっと込み上げてくるものがある。
だがその言葉の真意がわからない俺は、盃を持った手を膝に置きながら首を傾げた。
多分相当間抜けな顔をしているんだろう。
そんな俺に、ふっと小さな笑みを溢す土方さん。
そして言うんだ。
『お前がお前のまま生きて、俺たちがいたこと証明してくれよ』
出来んだろ?お前なら。