指先で紡ぐ月影歌
草木の間から漏れる光が、目の前の土方さんの姿を照らす。
真っ直ぐに俺を見て、まるですべてわかっているとでも言いたげなその顔。
してやったりと笑う顔は、確かに俺の知っている土方さんのもので。
思わず息を呑む。
そんな俺をよそに土方さんは得意気な笑みを消すことなく言葉を続けた。
『がむしゃらに真っ直ぐ。不器用なうえに馬鹿正直。それが俺の知ってる永倉新八って男だ』
馬鹿にしているようでそうじゃないとわかるのは、その口調が酷く優しいから。
その瞳がとても真剣だから。
『少しだって自分の志に背くことなく生きてきたじゃねぇか。証明するくらい簡単だろ?』
木の葉が騒めきたてて、目の前の彼の表情に木漏れ日を当てる。