指先で紡ぐ月影歌




眩しい日差しの下、浮かぶのはお得意の酷く意地悪いその笑み。

そんな姿ですら様になるのだから憎たらしいことこの上ない。


女はこの人のこういうところに溺れるのかもしれない。

いや、男も同じようなもんか。


キュッと持ち上がった口角。

癖のように寄せられた眉に、細められた瞳の先。


その表情の意味を俺は知っている。


それはいつだって悪戯に俺を挑発してきた。

いつだって、いとも簡単に迷っていた俺の心を動かす。

大丈夫だと、俺に絶対的な自信をくれるんだ。




「…なんだよ、それ」


『副長命令』


「はっ、そう言われちまったら断れねぇじゃんか」




あっけらかんとそう言われてしまえばもうお手上げで。

断れるわけがないじゃないか。




< 220 / 239 >

この作品をシェア

pagetop