指先で紡ぐ月影歌




だから俺やガキに賭けたのか。


そのとき思った。

やっぱり島田も生きているな、と。

この人は島田にも同じ任務を与えるつもりだと。


きっと島田は泣くんだろうなと頭の隅で思い、思わず笑いそうになっちまった。


俺がわかったと頷けば、今日一番の穏やかな笑みを浮かべた土方さん。

それは本当に笑った顔のよく似合う、日野のトシさんだった。




「あー…やっぱあんたと七分三分で酒交わしときゃよかったぜ」




口から出た言葉は紛れもない俺の本音。


あぁ、でもきっとあんたはこんな俺の言葉を笑うんだろう?


変わらない、あのどこか掴めない笑みで。




『バーカ』




土方さんの盃に酒を酌む。

俺の盃に土方さんが酒を酌む。


その量はどちらも同じ。




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