指先で紡ぐ月影歌
変わりはしない。
決して崩れない均衡は、背負った誠を示していた。
『俺たちは五分五分の酒でいいんだよ』
俺たちは同志だ。
かつて近藤さんから聞いた言葉を、訴え続けたその言葉を目の前の彼が紡ぐ。
目指す場所はあの頃と何一つ変わっちゃいない。
この絆は一つもブレちゃいない。
それは俺がこれから生きていくためには十分な言葉。
さぁ、これが最後の盃だ。
目を瞑ってコクリと酒を喉に流し込む。
サァァと再び一筋の風が吹き抜けた。
目を開ければ目の前に広がるのは鮮やかな青と緑。
あの人の姿はもうない。
目頭が熱くなって、涙が流れそうになるけれど。
けれど俺の心は晴れやかだった。
「まずは島田に会ってあの人の勇姿でも聞きますか」