指先で紡ぐ月影歌
驚いたなどという言葉では足りない。
そこにいたのはかつての上司。
江戸の地で道を別れた、永倉新八その人で。
最後に見たときよりも髪が幾分伸びているような気がするが、その笑顔は変わらない。
確かに鉄之助の知っている二番隊組長永倉新八だった。
もっとも彼の本当の笑顔を鉄之助が見たのはもう随分と前の話であるが。
それでも彼の笑顔には忘れられないものがある。
ニカッと太陽のように笑う彼に、鉄之助は間の抜けたような顔をして新八の顔を凝視した。
そんな鉄之助の反応に彦五郎と新八は二人、顔を見合わせて笑う。
どうやら予想通りの反応だったらしい。
してやったりと笑う新八の顔は、どこか昔の土方に似ていた。