指先で紡ぐ月影歌
そんな鉄之助を見ながら新八は思う。
(本当…土方さんも酷なことしたもんだ)
まだこんな小さなガキにあんな重い任務を背負わせるなんて。
(それこそ島田辺りに頼めばよかったんだ)
島田なら戦いきった後でも喜んで引き受けただろう。
それでも土方は鉄之助を選んだ。
きっと、それだけ信頼していたんだろう。
どうしても生きていてほしかったんだろう。
この小さな男にはそう思わせる何かがある。
「ほら、市村。わざわざ来てやったんだぜ?報告は?」
その場の空気を壊すようにわざとおどけて見せれば、ズビッと鼻を鳴らした後、鉄之助はスッと背筋を伸ばした。
そして真っ直ぐに新八を見つめる。
その姿にあの人の姿が重なった。