指先で紡ぐ月影歌
「永倉組長。市村鉄之助、任務完了しました」
そう言った瞳にはうっすらと涙が浮かんでいたけれど。
その瞳の強さを新八は知っていた。
その強さの意味を知っていた。
それは今はもういないあの人の、最後までいつまでも変わることのなかった瞳と同じ。
(あぁ、そうか)
だからこいつだったのかと新八は納得する。
こいつだから生きていなくちゃいけなかったのだと。
(こりゃあ、生かしておきたいわなぁ…)
思わずもらい泣きしてしまいそうに熱くなる目頭をぐっと堪えて、新八は鉄之助に向き直った。
そして言う。
「市村。その命は土方さんに貰ったもんだ。わかるな?」
「はい」
「だから絶対無駄にしちゃならねぇ」