指先で紡ぐ月影歌
指先で紡ぐ月影歌
最後に見送ったあの背中が、目蓋の裏に焼き付いて離れない。
届けられなかった言葉も、声に出せなかった想いも。
縋れなかった手のひらさえも。
全てを押し殺して痛みを受け入れた。
永遠に忘れぬようにとこの魂に刻みながら。
──────願いは叶いましたか?
その問いに三日月が満足そうに笑った気がした。
月だけが指先を貫く涙の名前を知っている。
【指先で紡ぐ月影歌 完】