指先で紡ぐ月影歌
<君まもらむ>
鉄之助が日野に辿り着いたのは、それから三ヶ月ほど後の七月初旬。
激しい夕立があった日のことだった。
「土方、副長、の…"想い"を伝えに参りました…っ!」
切れる息。乱れた服装。
そんなことを気にしていられないほど、鉄之助はただ必死にこの場所を目指して走ってきた。
蝦夷を出た日に比べ、随分と細くなった顔や手足。
それでも瞳に宿る光は消えることなく。
それは確かに彼から受け継いだもの。
「有り難うございます、市村くん。お疲れ様でした」
文字通り命を懸けて此処へ辿り着いた鉄之助を、佐藤家の当主・彦五郎は温かく出迎えた。