指先で紡ぐ月影歌
その瞬間
『あぁ…よくやった』
土方の声が、聞こえた気がした。
不器用に優しい、あの日聞いたものと同じ声が。
「副、長…?」
辺りを見渡せばふと見えた満足そうに笑う、もういない彼の姿。
そして頭に触れたあの日と同じ暖かさ。
『ありがとな、鉄』
降ってきた声に鉄之助の中から一気に色々な感情が押し寄せる。
哀しさも嬉しさも。
言い表しがたい複雑な感情も全て。
そしてその全てを投げ出すように、鉄之助はその場に泣き崩れた。
「ふく、ちょ…副長────────ッ!!」
声が枯れそうになろうと体が痺れようと関係ない。
構うことなく土方の名前を呼び続ける鉄之助。