指先で紡ぐ月影歌
「土方さん」
少しの間、一心不乱に木刀を振るその後ろ姿を見ていたが頃合いを見計らって声をかける。
真っ直ぐ淀むことなくその名を呼べば、驚いたように振り返る土方さん。
俺の気配に気付かないなんて珍しい。
一体どれほど入り込んでいたんだろうか。
土方さんは目を見開いて俺を見る。
そして困ったような頭を掻きながら短い返事をくれた。
そろそろ聞いてもいいだろう。
その表情の理由を。溜め息の意味を。
土方さんだって俺の性格を知っているはずだ。
俺は気が短いから。
いつまでも黙って待ってはいられない。
それに待っていたんじゃ、いつまでたっても話してくれないような気がするから。