指先で紡ぐ月影歌
ガンッガッ、ガッ
静かな夜の空の下に響く交じり合う木刀の音。
肌をさす空気の匂いと鼻を掠める木の匂いが高揚感を高めていく。
やっぱりこれが一番分かりやすい。
剣にある迷いが、見える覚悟が。
いつもより大人しいその音の重さが。
言葉以上にこの人の複雑な心境を教えてくれる。
隠し事が上手いこの人と腹割って話すより、ずっと素直に思いを示してくれる。
「何らしくねぇ振り方してんだ?土方さんのはそんな綺麗じゃねぇだ、ろっ!」
「っ余計なお世話だっつんだよ…!」
そう言って出してきた突きにも、いつもの荒っぽさはない。