指先で紡ぐ月影歌
少しだけ土方さんの表情が柔らかくなった気がするのは、多分気のせいではないだろう。
声をかけたときよりは眉間の谷が浅くなっている。
あとはこの人が話し出すのを待つだけ。
俺が何を聞きたがっているのかは、土方さんだってちゃんとわかってるはずだ。
ぼんやりと見上げた空には絵に描いたような綺麗な月が浮かんでいて。
雲はそれに近寄ろうとしない。
月見酒をするには絶好の空。
あとは酒と女がありゃ文句ねぇのに、なんて思いながら縁側に腰を下ろした俺。
暫くの間何を話すこともなくそうやっていれば、土方さんが深く息を吸い込んだのがわかった。
そしてゆっくりと吐き出された言葉に俺は息を呑む。