指先で紡ぐ月影歌




「芹沢さんたちを…殺す…?」




そう聞き返した声は、もしかしたら震えていたかもしれない。


聞こえてきたのは、よく見知った名前と耳を疑いたくなるような言葉。

そんな俺の問いに土方さんは"あぁ"と短く頷いた。




「会津からも度々言われててな…そろそろ目を瞑れなくなってきてんだ」




迷惑もかけられねぇだろ、と嘲笑うように歪むその唇。

濁された言葉はその決定を意味していた。


土方さんの言葉に近頃のことを思い返す。


確かにここ最近の芹沢さんは横暴な振る舞いが目立つようになっていた。


まぁ腕の達人だからな。わからないわけじゃない。

俺らと相容れないこともああいう態度になる原因の一つかもしれないが。




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