指先で紡ぐ月影歌
だから、早い段階から近藤さんに話すことは出来なかったんだろう。
きっとこの人のことだ。
何もかも自分の中で結論を出してから"これは決定だ"と言うような気がする。
「…新八には…言えねぇか。あいつは同門だもんな」
そう小さく零せば少し躊躇ったように息を呑んだ後、同じく小さな肯定の返事が返ってきて。
だよな、と息を吐く。
俺が新八の名前を出したのには理由があった。
土方さんは俺や新八のことを信頼してくれている。
そんな自信と自覚があったからだ。
新八もそう感じていると思う。
それは近藤さんに対する昔ながらの友情や、総司に対する兄弟みたいな感情とは違う。