指先で紡ぐ月影歌




だからこそ、今回のことは切り出しづらい。


それでも言わなくちゃならないんだ。

あいつには、絶対に。


それをこの人は背負ってる。




「……慣れねぇな。仲間を斬らなくちゃならねぇ感覚は」




静まり返った空の下、そう言って空を見上げた土方さん。


その瞳にはあの月が映っているんだろうか。

それとも黒い世界に支配されているんだろうか。

ここからはその瞳の色はわからない。


独り言のように呟かれた言葉に相槌を打つことなく彼を見つめる。


その横顔に、二つの顔が重なった気がした。


一つは俺がよく知ってるトシさん。

もう一つはこの組を支えていく土方副長。


同じようで違う、二つの顔。




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