指先で紡ぐ月影歌




トシさんには向いてない。

仲間を斬るなんて。

優しすぎるこの人には、身内にはどこまでも甘いこの人には向いてない。


あぁ、だけど。

決断の時が来てるのか。

新選組の土方副長になるときが。


何も変わらないなんてないんだ。

夢を追い、故郷を出たあの瞬間から。


こんなことを言ったら土方さんは怒るかもしれないけど、少しだけこの人を京へ連れてきたことを後悔した。

来なければ、トシさんはトシさんのままでいられたのに。あのままでよかったのに。


だけど俺たちは選んだんだ。新しい道を。


だから俺たちは進まなくちゃいけない。


進んだ道を後戻りしないように。


後悔しないように、生きていかなくちゃいけない。




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