指先で紡ぐ月影歌
「新八には俺から話しておくよ」
そう言って軽く右手を上げれば、空に向かっていた土方さんの視線が俺へと移った。
その顔には驚きが浮かんでいて。
瞳の中に映る俺の姿が動揺に揺れている。
こんなにも戸惑いの感情が表に出るなんて珍しい。
何だか今日は普段は見れない表情ばかり見ている気がすると、思わず笑いが込み上げた。
「だが…」
「大丈夫だって!上手くやるからさ」
眉を寄せる土方さんを遮って言葉を続ける。
そうでもしないと、それは俺の仕事だと言い出しかねない。
でもそんなこと必要ない。
「最後にあんたがあいつに声かけてくれりゃあ大丈夫だって」
それだけで、十分なんだ。