指先で紡ぐ月影歌
道場に響くバタバタとした幾つもの足音。
菓子を取ったのがバレたらしく、俺の名前を叫び泣きそうになりながら走り回るまだ小さかった総司がいて。
それを本気で追いかける左之がいて。
結局泣きそうな総司を助けるようにして、一緒に左之から逃走する俺がいる。
まぁ菓子とってこいって言ったの俺なんだけど。
そんな俺たちを見ながら爆笑している平助に、困った顔で笑う山南さん。
大声で怒鳴った後、眉間にしわを寄せ呆れたように溜め息を吐く土方さんと左之を宥める源さん。
それから、大きく口を開けて笑う此処の主である近藤さんがいて。
それがあの頃の俺の世界の中心だった。