指先で紡ぐ月影歌




きっとどこにでもある光景だったと思う。


それでもこんなに懐かしく思うのは、きっとどこまでも暖かかったから。


決して裕福で何でも出来るような生活でもなかったけど。

剣を交える音がして、認めてくれる友がいて。


それが楽しくて仕方なかった。

それが当たり前に訪れる日常だったんだ。



まだ戦とは程遠い、柔らかな喧騒があった頃。

ただひたすら笑っていられたあの時。


世の中の流れとか未来とか。



そんなことを考えるより、ただ目の前の幸せを全身で感じていた。




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