ある男女の恋愛事情
「……」
「……」
お互い無言が続く。
さっきの無言とは違う。
気まずく、重い無言。
「辺り、暗ぇーな」
「、」
「送ってく」
「ぁ、ありがと」
おもむろに立ち上がり
的を外し、安土を綺麗に整える。
そして弓と矢を終い
二人して弓道場を後にした。
ザッザ、と砂利道を歩く。
伊吹くんが前であたしが後ろ。
あたしは広くなったその背中を見ながら
さっきの会話を頭の中で繰り返していた。
…覚えていてくれていた。
でも、覚えてない振りをしていた。
どうして?
なんて、聞くほどバカじゃない。