ある男女の恋愛事情
結局この日も浅野と話す機会が
ないまま一日が終わった。
そしてそれから一週間部活で一緒になっても、俺はあいつに近づかなかったし、あいつも俺と目を合わせない。
この気まずい距離感を
どうにかしたかった。
でもそれよりも近づくのが恐い。
この気持ちの方が勝っていたんだ。
ずっと浅野のことを考えていたせいか
ここ最近俺の弓道の調子が悪い。
当たらない、なんてもんじゃない。
もうズタボロ。
カッコ悪くて情けなくて、そんな姿を浅野に見られたくなくて。
週に三回しかない部活を
俺はサボっていた。
「なーつっ」
「あー。って、佐伯か」
こいつか
今俺と噂になってる佐伯って。
「何それ〜。
あたしじゃ不足だとでも?」
「嘘うそ。嬉しいです」
「心こもってないなあ〜」
女子特有の高い声が耳に張り付く。
なんでこの場所分かったんだろ。
ああ、そういや噂になってたんだっけ。
最悪…
ここ静かだから気に入ってたのに。
また場所探し直さなきゃか。