ある男女の恋愛事情
「なんで? なんで浅野さんなの?
だって、今あたしたち噂では
付き合ってることになってるんだよ?」
「それは、あくまでも噂だろ。
全然気にしてねえから
佐伯も気にすんな」
「気にするよ!」
「っ」
「だって、あたしが
噂が立つように仕向けたんだもん!」
「…は、」
「そうでもしなきゃ、夏は
あたしを見てくれないじゃん!」
「え、ちょ、」
詰め寄る佐伯に俺は後ずさりした。
だけどすぐに窓壁にぶつかる。
「なのになんで浅野さんなの?
浅野さんの何処がいいの!?
あたしじゃ駄目なの?
ホントはずっと前から
あたしの気持ちに気付いてるくせに!」
一気に捲し立てた佐伯。
なのに俺はこの期に及んでも
浅野のことを考えていた。