ある男女の恋愛事情







好きよりも嫌われたくないって
気持ちの方が大きくて。


感情を殻の中に閉じ込めて

割られるのを待っているだけだった。



「俺、やだよ。
浅野と友達なんて悪いけど無理」


「、」


「浅野の彼氏になりたい――」


「え」



丸い目を見開かせ驚く浅野。

俺は少し伏し目がちに視線を泳がせ「ごめん」と謝った。



「な、なにがごめんなの」


「小6のとき傷つけてごめん、泣かせてごめん」


「、」


「守らなきゃいけないはずだったのに、一番傷つけて本当にごめん」



ぶんぶん、と首を横に振る浅野は

不安げに俺の制服をぎゅっと握った。



日が沈みかけている
廊下は俺たち以外通らない。




「浅野、俺あの頃から

浅野のこと好きだった、ずっと」




俺はもう一度

今度は浅野の目をみて言った。






< 30 / 36 >

この作品をシェア

pagetop