ある男女の恋愛事情
まさか高校で再会するなんて
思ってもみなかったから
あの頃のあたしが知ったら
絶対腰抜かすだろうな。
実際伊吹くんだと確信したとき、あたししばらくフリーズ状態だったもん。
なのに、そんな伊吹くんと
……部活が同じだなんて。
「神様って残酷…」
『ん? 神様?』
「あ、ううん」
きょとん、とした顔の友達に曖昧に笑って誤魔化し、あたしは弓を立て掛ける。
「なあ、浅野サナ。
ギリ粉持ってねー?」
「持ってるけど貸さない」
「え、なにそれ。
もしかして今朝のこと
まだ根に持ってる系??」
「現在進行形で怒ってる系!」
「悪かったって。
いいじゃん実際は
めくれてなかったんだし」
「そういう問題じゃないもん」
「てか実際めくれてたら
オレ教えてやんない側だかんな」
「最低最低最低っ!」
「男なんてそんなもんだろ」
そう言って、あたしの髪を
くしゃっとした伊吹くん。
咄嗟のこと過ぎて
振り払うのがワンテンポ遅れる。
そうやって、あたしの心に
踏み込んでこないでよ。
あたしはもう、伊吹くんを好きでいちゃいけない人なんだから。