ほんのひとすじの偶然

「!!」

本棚の一歩手前で、その本は誰かの手に取られた。

声をあげかけたのを飲みこみ、私は立ち止まる。


その人は背が高くて、私よりも年上で大人の男性という感じ。

彼は表紙を一瞥すると、私に気付いた様子もなく立ち去っていった。

「あの本読みたかったのか?」

私を追いかけてきた優樹が後ろから聞いてくる。


「…うん。でも早い者勝ちだよね」


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