ほんのひとすじの偶然
* * *
いつものように優樹と別れて、本を探していると、急に肩を叩かれた。
振り返ると先ほどの男性。
「さっき、この本取ろうとしてましたよね」
と言って、差し出されたのは先に取られてしまったあの本だった。
「え…!?」
「他に読みたい本が見つかったので、先にどうぞ」
声をかけられたこと以上に、その言葉に驚く。
「え、でも…」
「遠慮しないで。どうぞ」
そう言って、男性は私の持っている本の上に、その本を重ねた。