お嬢様の仰せのままに。
「親父さん、ここで帰んの?」
「うん、この近くに宝生のヘリポートがあるの」
「あー…なるほど」
あたしはまたしゃがみ込んで、
お母様が眠っている場所を撫でた。
石の冷たい感触しかしないけど、
少し、勇気が欲しくて。
「…ねぇ、颯」
「ん?」
立ったままの颯とは、視線が交わらないまま。
「あたし、颯が好き」
「…え?」
「小さい頃から、ずっと。颯だけが特別だった」
「……」
「下僕なんて縛り付けたけど、もういい。
ピアス外したのもイヤーカフ外させたのも、関係を変えたいから」