イ オ ン
「変わった名前だねぇ」
私の名を聞いた人が必ず言う台詞だ。だから私は自分の名前が好きではなかった。
「……よく言われます。」
すると彼は、私が思いもよらなかった言葉を言った。
「いい名前だ。とても」
彼は器用にガーゼを切りながら言った。
私は驚きで、少しの間何も言えなかった。そんな言葉を言われたのは初めてで、どう答えていいか全く分からなかった。
「よし、終わり!」
私の膝にガーゼをはり終えた彼は救急箱を片付けながら言った。
「どう?立てるかな」
私はすくッと立ち上がる。その様子を見て彼は「良かった……」と呟いた。