10年後も…〜song for you〜
しばらくして、絵里は職場から連絡があり、俺は帰ることにした。
結局、ただ昼食を済ませただけで、一緒に居たのは、1時間ちょっと。
肝心な話も出来なかった。
絵里の部屋を出て、溜め息がもれる。
ポケットに入れていた物…
話が出来ず、渡しそびれた。
俺は、それを握りしめた。
エレベーターのボタンを押して、待っていると、
「健、傘」
絵里が傘を持って、追いかけてきた。
そのタイミングでエレベーターが来て、扉が開いた。
エレベーターに乗って、傘を受け取った。
「ごめん、忘れてた。サンキュ」
「もう、やんだみたいだから、大丈夫と思うけど…」
絵里が俺をまっすぐ見つめた。
「その傘、真琴ちゃんのでしょ?」
「え?」
その瞬間、扉が閉まった。