10年後も…〜song for you〜
「あら、真琴お帰り」
玄関の前で某然と立ち尽くしていると、お母さんが顔を出した。
お母さんの姿にハッとして、我に返った。
「…ただいま」
「どうしたの?ぼーっとしちゃって。あら?健くんは?一緒じゃないの?」
健という名前に身体がビクっと思わず反応してしまった。
「健とは、別々に帰ってきたから…」
「あら、そうなの?お花見楽しかった?」
「…うん。楽しかったよ」
私は、それだけ言うと自分の部屋に入った。
荷物を下ろすと、一気に疲れが襲ってきた。
ベッドに倒れこんだ。
晴人くんの言葉が再び頭を駆け巡る。
目を閉じると、ギターを奏でる健の姿が瞼の裏に映る。
ーピピピっ!
その時、携帯電話が鳴った。
おもむろに、携帯電話を開くとディスプレイに表示された名前に、思わず飛び起きた。
鳴り続ける携帯電話に戸惑った。
このタイミングで掛かってくるなんて…。
戸惑いながらも、ボタンを押して携帯電話を耳元にあてた。
「もしもし…健?」