10年後も…〜song for you〜
『おう。もう家か?』
電話越しの健の声…。
もう何千回と聞いた声なのに、ドキドキしている。
晴人くんがあんなこと言うから、変に意識してしまっちゃうよ…
「うん。もう家に着いた。健は?」
でも、動揺を隠して必死に変然を装った。
『さっき、絵里をマンションまで送ったとこ』
「そっか…気をつけて帰ってきて」
『あー…それがさ、さっきバイト先のコンビニに寄ったら、急に深夜のシフトに入ってくれって頼まれちゃってさ』
「え?今からってこと?」
『うん。そのまま帰らず働くことにしたから、おばさんに言っといて』
なんだ。
ただの伝言か…。
って、あたし…。
少しガッカリしてる自分自身に戸惑って黙っていると、
『なぁ、真琴』
健の声のトーンが低くなったのが分かった。
その声に、またドキドキしてきた。
「ん?何?」
『月、見てみろよ』
健の言葉に、ベッドから立ち上がって、部屋のカーテンを開けた。