10年後も…〜song for you〜
私が何も言えずに黙っていると、
「明日は、親父さんの命日だろ?もう4年か…早いな…。ガキの頃からたくさん面倒みてもらって、すげー感謝してる。親父さんは、俺にとって本当の父親のようなもんだった。一緒に晩酌するのが夢だったけど、叶わなかったな…」
健は私から目を逸らして、お父さんのお墓を見てそう呟いた。
私はただそれを黙って聞いていた。
「お袋さんにもすげーよくしてもらって、息子同然のように可愛がってもらった。本当に感謝してるよ…」
健はそう言うと、深い息を吐いた。
そして、私を真っ直ぐと見た。
「なぁ…真琴…ごめんな。こんなズルい俺で…。心配すんな。俺は…」
なに?
健は、なぜか言いかけて口を閉じた。
ズルいって何?
嘘ついたから?
いきなり居なくなったりしたから?
こうして会えたじゃない…
もう居なくならないよね?
「真琴…元気でな。お前は、晴人と幸せになれ…あいつなら大丈夫だ、俺なんかよりずっと」
電話と同じ…
それが、健の望みなの?
また私のそばから離れるの?
アメリカに出発した時、空港で私は泣いてしまった。
その時の情景が頭を過る。
でも、あの時と何かが違う…
まるで…
永遠の別れのような…
もう二度と健に逢えないような…
そんな気がした。
健は、ゆっくりと私の真横を通り過ぎた。