10年後も…〜song for you〜

悲しみの序章


【現在】


全てを思い出した。


中学の文化祭。
あの日は、人生のターニングポイントだった。

健と祐樹くんは音楽を始めたきっかけになった。私は、写真を撮るきっかけになった。



そして、私のファーストキス…。


でも、わざとって本当なの?



「一緒に倒れたのはマジだった。起き上がろうとしたお前をワザと引き寄せてキスした」


アッサリと言い放った健。



私は頭が混乱してて、怒るのを忘れていた。


「だから俺は、ずっとお前が好きだったんだよ。お前に気持ち伝えたくて、あんな卑怯な真似もした。けど、お前は鈍感だから全然気付かねぇし。俺が中学卒業したら、お前好きなやつ出来るしよ…そしたら、気持ちなんて余計伝えきれなくなって…」


「だ、だって…」



健の口から次々に出てくる本音に、私は息を飲んだ。


「お前は、昔から俺のことなんて眼中ねぇよな?」


健は、ふぅーと息を吐いた。


「祐樹、あの時俺たちがキスしてるの見てたらしいんだ」


「え?」


「文化祭が終わって何日か後に、祐樹に言われたんだよ。一回ドア開けたけど、お前らが良い雰囲気だったから、入れなかったって」


嘘…


祐樹くんに見られてたの?


「祐樹には俺の気持ちなんてバレバレだった。あいつには、俺も負けたくなかったしよ。だからあいつが、ギターをやるって言い出して、お前がかっこいいって言ったから俺も始めたんだ。お前さ、祐樹がお前のこと好きだったことも気付いてないよな?」


はい?


祐樹くんがあたしを?



私は何も言えず、驚いて目を見開いた。

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