10年後も…〜song for you〜
私もお母さんも祐樹くんも夏美も、
誰も口を開かなかった。
お母さんはただ私の背中を優しく撫でてくれていた。
その時、
「すみません。失礼します」
先生が入ってきた。
「あいつの意識戻ったんすか?」
祐樹くんが先生に詰め寄ると、先生の後ろから、スーツ姿の40代くらいの人が顔を出し、一礼をした。
「いえ、まだ意識は戻っていません。あ、こちらは…大学病院の心臓外科の先生で廣川さんの担当をされている伊豆先生です」
「伊豆です。よろしくお願いします」
先生は厳しい顔をして、もう一度深く一礼をした。