10年後も…〜song for you〜
本音
「竹崎さん!竹崎さん!」
「あ、え?はい…」
「何ボーッとしてるの?」
大村主任が気付けば目の前で呆れた顔をして立っていた。
「あなた、入社してからずっとそんな調子よね?やる気あるの?いつ辞めてもらっても構わないわよ」
「すみません…」
「これ、来週の会議に使う資料だから20部ずつコピーして」
「はい…分かりました」
新しいスーツに腕を通し、会社に入社して一週間が経っていた。
指示された用紙を持ってコピー機の前に立ちボタンを操作していると、
ーピピピッ!
ポケットに入れていた携帯電話が鳴った。
慌てて携帯電話を開くと、単なるメルマガだったことに安堵した。
健のことでいつ連絡が入ってもおかしくない。
健にもしものことがあったら私はどうするんだろう…
自分の事なのに、自分が分からない。
でも、真実を知ったあの日から健に逢うことがどうしても出来なかった。
怖かった。
怖くて怖くて…たまらない。
健に逢いたいけど、まだ真実を受け入れきれないでいる…。
こんな気持ちのままで健には逢えないよ…。
そうして、一週間…
仕事に逃げていたが、頭の中は健のことでいっぱいで、全然集中出来ていなかった。