10年後も…〜song for you〜
その時、
「真琴ちゃん」
店のドアが開き、私を呼ぶ声がした。
入口の方に目をやると、
「絵里さん…」
絵里さんがそこに立っていた。
カウンター席から、奥のテーブルの方に席を移った。
向かいに絵里さんが座った。
「ありがとう、夏美ちゃん」
夏美が、絵里さんの前に紅茶を置いた。
「ごゆっくり」
夏美は定員らしく頭を下げて、カウンターに戻って行った。
「真琴ちゃんに話があるの」
絵里さんは少し怒っているような口調だった。
話の内容は、検討がついていた。
「どうして、病院に行かないの?」
「……」
私を息を飲んだ。
「健はずっと、真琴ちゃんのこと待ってるのよ。口には出さないけど、それくらい分かる」
「ごめんなさい。あたし、ずっと考えてて…」
「逢うのがつらい?そうだよね?辛いのは当たり前。あたしだって、辛いの。毎日どんな気持ちで健に逢いに行ってるか分かる?」
絵里さんが悲しい顔をした。
「もし、もしもこのまま…健に万が一のことがあったらどうするの?このまま逢えないまま、健のこと失ってしまうのよ?」
絵里さんは、紅茶を一口飲んで、私をじっと見つめた。
「後悔しないように、真琴ちゃんの気持ち、きちんとぶつけておいでよ。健もきっと、真琴ちゃんに言いたいことがたくさんあると思うの。お願い。真琴ちゃん…健を辛いままで終わらせないで」
絵里さんの言葉で、全てが吹っ切れた。
私は気付けば病院へと走り出していた。