10年後も…〜song for you〜
グランド横の花壇の隣にあるベンチに腰掛けた。
「お願いって何かな?」
「あの…モデルになってくれませんか?」
そう言った彼女は、カメラを手に頭を下げてお願いしてきた。
…モデル?
「今度写真の大会があって、そのモデルを柏木先輩にお願いしたいんです」
そういうことか…
なんだか、複雑な気持ちだった。
写真を撮られるのは正直苦手だった。
「ごめんね、それはちょっと…」
「そうですよね…すみませんいきなり、こんなお願いしちゃって」
シュンとする彼女を見ると、心が痛む。
「柏木さん…髪が凄く素敵だから」
ん?
髪?
「え?髪?」
「あ、もちろん柏木先輩は全てが素敵です」
慌てる姿が可愛いくて、フっと笑ってしまった。
「ありがとう」
私がにっこり笑うと、彼女もにっこりと笑った。
その笑顔が太陽のように明るくて、眩しかった。