10年後も…〜song for you〜
何も返せないで黙っていると、
「二人とも落ち着きなさい」
今まで黙って聞いていたお母さんが間に入ってきた。
「少しお互い冷静になりなさい。お互いのことを考えてる気持ちは分かるけど、それが伝わってないみたいね。感情的になり過ぎよ。これじゃいつまで経っても解決しないわよ」
「お母さん…」
そう言ってお母さんは寝室に戻っていった。
重い空気が流れるリビング。
すると、健がゆっくりと立ち上がって、キッチンの冷蔵庫に手を延ばした。
「喧嘩してもしょうがねぇ、ほら食え」
健が冷蔵庫から取り出し、テーブルに置いたのはプリンだった。
「健…あたしね」
「お前が俺のこと心配してくれてるのはすごく嬉しい。でも、お前がカメラの夢を投げ出してまでも、心配してくれてるのはすごく悲しいんだ…」
「健…」
「行ってこいよ。な?俺の為にも…。お前の撮った写真見たいんだ」
「健…あたしね、健が居なくなっちゃわないかが心配なの…」
「ばーか。前にも言ったろ?俺は大丈夫だから…。お前の為に頑張るって決めたんだ」
「うん…健ごめん」
健はフッと笑った。
「ったく。お前は考え過ぎなんだよ。最近調子も良いし、なんか無駄にパワーあまってんだよ」
「え?」
健がニヤニヤとこっちを見た。
「なぁ…あのさ…一週間離れるんだからさ…」
「な、何よ…」
健がぐっと顔を近付ける。
「おもっいきり今のうちイチャイチャしとくか?」
「はぁー?何よそれ!」
健がガバッとあたしをソファの上に倒した。
ちょ、なんなの?
さっきまでの空気は?
ってか、この状況って…
頭がパニックになるし!
「やだ、何よちょっと!やめてよ」
健が首筋に軽くキスをした。
「ばか!お母さんがそこに居るんだから!」
慌てている私に健がプッと吹き出した。