10年後も…〜song for you〜

モヤモヤを抱えたまま、空港に到着した。



タクシーの運転手さんに声を掛けられるまで、ぼーっとしていた。




出発ロビーに向かう足取りが重く、何度も空港の出入り口に目を向けた。



健が見送りに来てくれるのを願っていた。





でも、その願いは叶うこともなく、出発ゲートをくぐった。



出発ロビーの椅子に座っていると、会社から電話が入った。



「はい、竹崎です」

『おはよう。声に覇気がないわね。大丈夫?』

大村主任だった。

「…大丈夫です。すみません」

『不安な気持ちは分かるわ。でも私はあなたを信じたのよ。不安なままでは良い写真なんて撮れないわ。自分を信じなさい』



そうだよね…。




あたし何考えてんだろ?




仕事に集中しないとダメだ…。




こんな気持ちのままじゃ、絶対に良い写真なんて撮れない。




今は、仕事のことだけを考えよう。



私は、目を綴じて深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
そして、自分の頬を叩いて我に返り搭乗した。










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