10年後も…〜song for you〜
砂浜に真琴が来たのは夢で病院に居るのが現実だった。
ICUの入り口まで行くと、桐谷が椅子に座って俯いていた。
「桐谷…来てたのか?」
その声に顔を上げた桐谷の目は真っ赤だった。
「健くん!!目を覚ましたんだね…で、電話もらって…慌てて東京からあたしとおばさんで飛んで来たの…」
「あ、あいつは…?真琴は?」
声が震えて仕方ない。
桐谷は首を横に振った。
「まだ意識が戻らないの…。先生が…もしかしたら…もしかしたら…いやぁあー」
そういうと、桐谷が床に膝をついて泣き出した。
「桐谷なんだよ?なんだっていうんだよ!!」
「じ、事故から…事故から四日も経ったんだよ!?それなのに、まだ真琴の意識が戻らないの…先生が…先生がね…先生が…言うにはもう意識が戻ることはないかも知れないって…」
意識が戻らない…?
そんな馬鹿なことあるのか…?
「脳死だって…」
桐谷が小さく小さく呟いた。
その瞬間、
悲しみという絶望に立たされたー