10年後も…〜song for you〜

本当にふざけんなよ…。


俺は、溢れ出そうとする涙を必死で拭った。



『7月3日
今日は、TERAの開店30周年お祝いパーティー。健を茂さんが抱きしめていた。その姿を見ていると、涙が止まらなくなった。健にバレないように、慌ててトイレに駆け込んだ。健は自分の身体だけを心配してて欲しい…。
お祝いの席で、健はギターを奏で歌を唄った。その姿を見るとまた泣きそうになる。でも、そこに居たみんなはすごく良い笑顔で健の演奏を聴いていた。健の歌はみんなの心に響くんだね。健もたくさんの人に自分の歌が届いて幸せそうだった。

7月6日
健の夢はあたしの夢でもある。今まで撮った写真を今日は改めて見た。健の笑った顔、健の怒ってる顔、健の変顔…どれも大好きだけど、やっぱりあたしは、演奏して歌ってる顔が1番好き。その中でも1番好きだったのは、高校生の頃、初めてギターを買って自慢気に嬉しそうに笑ってる写真だな…。

7月10日
夜、仕事から帰ると、健が久々にゲームをしていた。冷蔵庫を開けると、私の好きなプリンが出て来た。健がまた買ってくれたんだ。
なんだかすごく愛おしくなって、ゲーム中なのに、後ろから抱きしめた。健は驚いてたけど、あたしの頭をポンと叩いてうざいからっていじわるを言って笑ってた。
でもこの時、健の大きかった背中が小さくなった気がした。
健…痩せたんだ。あたしは健にバレないように、こっそり涙を拭った。

7月12日
仕事が休みだったから、居ても立っても居られなくて、健に内緒でまた病院に行ってきた。先生や看護師さんに一生懸命お願いした。健の病気を治して欲しいと…考えてみれば、そんなこと先生だって一生懸命だって分かってる。でもあたしは、健を絶対に失いたくない。どうかどうか生きて…。
帰り際、病院の廊下でドナーのポスターを見つけて、伊豆先生に詳しくドナーについて話をきいた。
もし…もしあたしが何かあって、健のドナーになれば、健を助けることが出来る。健のそばには居られなくなるけど、健の命が繋ぎとめれれば、あたしは…』
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