siNger
「そ-・・・なんだぁ。」
「うん。でも1年までは通ってたから教えられると思うよ。」
1年までは通ってたんだ。
退学したってことだよね。
それがカケルくんの『まだいえないこと』・・・?
「で?何からやる?数学?」
「あ・・・ぢゃぁ数学からで!」
数Ⅰ。
Xがどうとかyがどうとか・・・
全く授業では???マークがとびかっていたけど。
カケルくんの教え方はとても上手で,私は「へー」とか
「おー」なんて感激しながら数学のとりこになったんだ。
ただ時々,カケルくんが「あれ。ちょいまって。」
なんて,頭を抱え込んで真剣に悩んでいる姿を見ると,
なんだか笑ってしまった。
そのたびに「笑うなよ」なんて言いながら私の額をこつく彼が
本当にいとおしく感じた。