siNger
私は走って出口を出て彼に駆け寄った。
「カケルクン??」
「――――――ーッ!!!」
私が声をかけると,彼はびくっとしてこっちをみた。
「だ・・・いじょうぶ??」
「ア・・・うん。ごめん。」
彼の顔が青ざめているように見えた。
「具合悪いの??」
「・・大丈夫。ちょっとビックリしただけ。」
そういうと彼は大きくため息をついて立ち上がった。
「春美・・・・ごめん、今日は帰るよ。」
「え?」
「一緒に帰ろう?」
彼は私に右手を差し出した。
私はその手をぎゅっと握りしめて,嬉しさのあまり,彼が青ざめていた理由を深く考えなかった。
気づいてあげられなかったんだ。