siNger


それから、私とカケルくんは何も話さなかった。


あたりが暗くなったところで,カケルくんが立ち上がった。



「帰る?送るよ。」
「あ・・・・はい。」


私は彼の横で歩く。






お礼・・・・言わなくちゃ。





’自信持てよ‘






その言葉になんだかすごく救われた。


心が軽くなった。




私はお礼を言うタイミングを失った。








「家・・・ここなんです。」
「そっか。」
「あ・・・・あの・・・・。」
「?」













ありがとう











でも何にありがとうって言えばいいのッ!?;





「え~っと・・・;;」
「・・・・・?」
「その・・・ですね。」





「あぁ、ハンカチ?」



「え!?」



私が渡したハンカチを,彼がまだ持っていた。



「ごめんなさい!!持たせちゃって!!!」

私は手を出した。
でも彼は渡さない。


「・・・・・・。」
「・・・・・・?」





「次会った時に返すよ。洗濯して。」





―またね―






「え・・・?」
「あの場所でどうせ会うだろ?」









「またね。」







そう言って、カケルくんは行ってしまった。



また会える






なぜか嬉しかった。
また会っていいんだ。
また会えるんだ。



また勇気をもらえる??








「あ。お礼言うの忘れた;;」
< 19 / 224 >

この作品をシェア

pagetop