siNger
―もう・・・俺はどうすることもできないけど―
カケルくんがそういった瞬間,なぜか公園の時を思い出した。
ケンカしたであろう怪我に,
殴ったであろう右手の赤さ。
「だから・・・泣くなよ。」
「え?」
カケルくんの意外な言葉に驚く。
「私・・・・泣いてる?」
「うん。」
「雨じゃなくて・・・・?」
「うん。涙出てるよ。」
頬を触ってみる。
目に触れてみる。
「・・・ほんとだ。」
「・・・・・。」
「気がつかなかった。」
「ふっ。鈍感。」
自分は泣いていた時がついたら,なんだか安心して,
私は下を向いて泣きだした。
―――――――!
それと同時に,カケルくんがフェンスの下の隙間から私に手を合わせてきた。
「なんか俺・・・・あせらせるようなこと言った感じがする。」
「?」
「ゆっくりいきなよ。大丈夫だから。」
「・・・・・大丈夫かな?」
「うん。」
「春美は優しいいい子だよ。大丈夫。」
私のカケルくんを握る手が強くなる。
カケルくんの握る手も強くなった。
「カケルく・・・ッ」
「うん?」
「こわいの・・・っ」
「!」
ヒトリハイヤ
「助けて・・・・」